お元気でしょうか。
毎月こうしてお便りを書かせていただくことを心から嬉しく思っています。
いつもほんとうにありがとうございます。

週明けはクリスマスですね。
クリスマスの由来は諸説あるのですが、古代ローマ暦の冬至の日に行われていた
太陽神への収穫祭が最初で、のちにキリストの生誕祭と結びついてクリスマスに
なったと言われています。
冬至の頃は、日が短く寒く、古代の人々は闇への不安や恐れを感じる一方で、
不滅の太陽を信じて、盛大なお祭りを各地で行っていたようです。
クリスマスに様々なお料理を食べるのは、その年の収穫物をすべて食卓に
並べていた収穫祭の名残だとか。
クリスマスを厳かに過ごす習慣は、昔太陽が休んでいる時期に騒ぐと光が
戻ってこないと信じられていたためなのだそうですよ。
これらは現代のクリスマスにも引き継がれていますね。
恋人とロマンチックに過ごしたり、家族や友達同士でワイワイ騒いだり…が
主流のジャパニーズクリスマスですが、あなたはどんなふうにお過ごしに
なられるのでしょうか。
麗王でも特製クリスマスケーキとともにお待ちしていますよ~。

そしてクリスマスが終わるともう新年。
政治の世界でも政権が変わるなど、いろいろ変化の多い年でしたが、
私達は社会の激変に呑み込まれることなくどのようにしたらこの時代を
うまく泳ぎ切ることができるのでしょう。

福沢諭吉の「学問のすすめ」をお読みになったことがおありですか?
私も学生時代に読んだことがあるのですが、
「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」…というあれです。
ふと思いました。「あれ? その次に続く言葉って何だったっけ?」と。
それで、130年以上も読まれ続けるこの世界的名著の中に何か今を生きぬく知恵が
あるのではと、福沢諭吉本を何冊か買って再読してみることにしました。
やはりありました。素晴らしい言葉の数々が。
その中から一つだけ御紹介させていただきますね。

渡り鳥である雁の群れには、それが十羽であれ、五十羽であれ、
必ず奴雁(どがん)と呼ばれる一羽がいるそうです。
雁が渡りをする際には、その群れの中で、常に危険を予測してそれに備える雁を、
奴雁というのです。
群れが多かろうとも、奴雁は一羽しかいないらしく、空を飛んでいるときや、
群れが羽を休めて餌をついばんでいるときなど、どんなときでも、
奴雁は決して休むことなく、首をぐーっと長く伸ばしてまわりをよく観察し、
もし危険なことが起きそうだったらすぐに大きな声で鳴いて知らせ、
群れを安全なところに導いていくというのです。

教育論集の中で福沢諭吉は、学者とは、国の奴雁であれと綴っています。
今が豊かでしあわせな社会であったとしても、学者は常に一人孤独で、
命がけになって、集団や組織、地域を守るべく、
奴雁の役割をしないといけないと。

私は、奴雁という存在をひとつも知らなかったので、
いたく感動してしまいました。そして、社会という長いものに巻かれずに、
一人孤独に、命がけになるという奴雁の生き方や仕事に心を打たれたのです。

そして考えました。今、私達の家庭で、地域で、会社で、日本という国で、
そして世界という地球全体で、ほんとうの意味において奴雁の役割をしているのは
何だろうかと。
また、自分自身が奴雁となって守るべきものは何だろうかと。

今こそ奴雁の精神を学ぶべき時代ではないでしょうか。
これはなにも学者の世界だけのお話ではないのです。
私達は誰しも、スケールの大小はあるだろうけれど、一羽の奴雁であることを
忘れてはいけないということを強く感じました。
そして、これからの暮らし方、働き方、過ごし方、生き方を、
新たにするためのヒントを、私は奴雁から学びたく思いました。

さて。
今年も残すところ10日ほどとなりました。
この一年本当にお疲れさまでした。
今年もいろいろと苦労があり大変でしたね。
あなたは今どんなお気持ちでお過ごしでしょうか。
お疲れになっていませんか。
心配事はございませんか。
夜はよく眠れていますでしょうか。
ご病気などされていませんでしょうか。
楽しいことはありましたか。
困ったことなどありませんでしょうか。……
日々麗王に立ちながら、ふと手をとめて、こんなことばかりを思います。
あの人のお顔、この人のお顔…。
とても不安定で、不景気な今、たくさんのお店の中から、麗王を選んで
いらしてくださることが、どんなにありがたいことかと考えると、
こんなふうにみなさまのことを思わずにはいられないのです。
この前いらしてくださった時、何かひとつでもお役に立つことはできただろうか。
行ってよかったと思っていただけただろうかと、一人一人のお声を聞きに
お伺いしたい気持ちで一杯です。
いつものように麗王に行ってはみたものの今日はつまらなくて損をしたと
がっかりされないよう、みなさまの大切なお金を無駄にしないよう、
隅々まで心を配り、そしてみなさまにどんなふうに楽しく時間を
お過ごしいただこうかと深く考えながら、反省もしながら、
お一人お一人の肩にそっと手を当てるような気持ちで、
これからも麗王に立たせていただきます。
みなさまのおかげで、こうしてまた一年間、麗王を続けることができました。
本当にありがとうございました。
どうか来年からもまた麗王にいらしてくださいますよう心からお願い申し上げます。

あなたが穏やかに一年を締めくくることができますように。
そして何よりも、どうかこの上もなくお幸せでありますように。

【2012.12.20 末金典子】