もうすぐ師走だというのにまだまだ暖かい毎日ですね。
でも何だか嬉しいような。
あなたはお元気ですか~?

さて、2000年にアメリカで制作された「ペイ・フォワード」という映画を
ご覧になったことがあるでしょうか?
11歳の少年トレバーが「世界を変えたい」と考えた奇想天外なアイデアが、
他人から受けた厚意をその人に返すのではなく、まわりにいる別の人へと
贈っていくという「ペイ・フォワード」。
やがて、少年の考えたこのアイデアが広がり、心に傷を負った大人たちの心を
癒やしていく…というストーリーなんです。

先日これと同じようなことが私の身に起こったので、あなたと分かち合いたいと
想い、これを書いています。

私は北谷のアラハビーチの目の前に住んでいて、毎日7キロほどジョギングを
しています。コースは、アラハビーチを横目に走りながら、北谷公園を通り抜け、
サンセットビーチを回り込み、また戻ってくるという具合。
その道々に、もうわんさかノラ猫ちゃん達がいるんです。50匹かなぁ?
もっとかも…。デブ猫から、生まれたての子猫までもう本当にノラ猫だらけ。
私は家でも猫を3匹飼っているのですが、外出の際にはノラ猫のためにとバッグに
キャットフードを持ち歩くほどの大のネコ好き。
そんなわたくしとしましては、このノラ猫達のことも放ってはおけず、
ジョギングの際にはリュックに500グラム入り1袋のキャットフードを詰め込み
ノラ猫を見かける度に勝手につけた名前で声をかけ、ご飯を配り歩くという始末。
でも、以前そのことで大阪の建築家の先生に厳しく叱られたことがあるんです。
「あなたは偽善者だよ。そのネコを一生飼ってあげられるのならエサをあげても
いいと思うけど、ただ一時だけあげるというのは、所詮あなたがその時だけ
いい人になりたいという自己満足に過ぎないんじゃないの?」と。
すごく考え、悩みました。確かに一理あるかな、と。それでも、
「もしも餓えて死んでしまうのなら、その前に一度でも、あのご飯美味しかったな、
人間に優しくされたな、という想いがあってもいいのでは。」
と思ってみたりもして、自問自答しながらもご飯をあげ続けていたある日のこと
なんです。
走っている私の前方で、アメリカ人の男の人が、私の500グラムどころか
バケツにもうどっさりとキャットフードを入れて、スコップでノラ猫達に豪快に
ご飯を配り歩いているではありませんか!!
なんだかもう胸がいっぱいになってしまい、思わずその人に駆け寄って、
眼をうるうるさせながら、感激の意で片手は胸に手を当てて、
もう片手はアメリカ人の腕に軽く触れながら
「Thank you!  Thank you very much!!」
とお礼を言いました。
以来このアメリカ人も毎日ノラ猫達にご飯をあげているんだということがわかり、
私は同志を得たような感じもして、フード入りリュックを背負って
また走り続けていたそんな先週の出来事です。
いつものように「はっちゃん」という白黒ぶち猫の横ににしゃがみこんで
ご飯をあげている私の所に、御年配の御夫婦が立ち止まられ、
「あぁ、あなただったのねぇ!!」
と声をかけてこられました。
うかがうに、米軍雇用員を定年退職なさったというこの御夫婦が
先日いつものようにウォーキングしておられた時、目の前で「アメリカ~」が
バケツに入ったフードをノラ猫達に豪快に配り歩いていたので、
とっても感動なさって、
「外人さんは本当に親切だね~。偉いね~。」
と声をかけたらしいんです。そうしたらそのアメリカ人が
「オキナワの女性だって配っている人がいますよ。
その人が以前『ありがとう。本当にありがとう。』と目を潤ませながら
僕の腕に触れ声をかけてくれたんです。
僕は最初不思議に思いました。この女性は猫達の親でもないし、飼い主でもないし、
この公園の人でもないだろうに、なぜこんなにも感激して、僕にお礼を
言ってくれるんだろう、と。
でもその女性に腕を触れられながらお礼を言われた時に、
とても温かい気持ちが腕からどんどん伝わってきて幸せな気持ちでいっぱいに
なったんです。
だからあなた達が僕を労ってくださる気持ちがおありなら、
あなた達が彼女に出会った時に、どうか彼女の腕に触れてその気持ちを
ペイフォワードしてあげてくださいませんか。」
と言ったそうなんです。
そう話し終わるやいなや御夫婦の奥さんの方がいきなり私を
ぎゅっと抱きしめてくださり、
「あなただったんだねぇ。会えてよかったさ~。ね~ね~、毎日本当に偉いねぇ。
ありがとうね。」
と言ってくださったんです。
もうただうるうる……。
お礼を言われたくてしていたことではないけれど、こんな風に見ず知らずの方から
帰ってくるなんて、なんだかとっても感激したのです。

少し似た話ですが、
オリオンビールさんの量販課長代理で當間さんという素晴らしい方がいます。
提携関係にあるアサヒビールさんの東京本社出向に、相手をまず知ることからと
真っ先に手を挙げ、奥さまと共に転勤し上京。アサヒさんの社宅に住み、
夜間にはグロービス経営大学院で学んだというがんばりやさんの人で、
この當間さんが先日涙ぐみながら素晴らしいエピソードをお話くださいました。
東京在住の時に奥さまが妊娠なさっておられていて、頼る人も知り合いも
いないまま、不安のうちに東京で赤ちゃんを産むことになったそうです。
するとそれを知った社宅の人達が毎日食事を持ってきてくださったりとても親切に
お世話してくださったそうです。當間さんの奥さまはすっかり恐縮してしまい、
「こんなに親切にしていただいても、私達は沖縄のオリオンビールの人間であり、
いずれは沖縄に帰る身です。どんな風にお返ししてよいやらわかりませんので
どうぞお構いなきようお願いいたします。」
とおっしゃったそうなんです。その時社宅の奥さまがこう答えられたそうです。
「當間さん、お返しなどここでする必要など何もないんですよ。
でもどうしても気詰まりでとおっしゃるなら、いつかあなたが沖縄に
帰られた時に、どなたか困っている方がいらしたらその人に親切に
してさしあげてくださいね。」と。
これもまた素敵なペイフォワードですよね。

仏教の概念に「布施」の心というものがあります。
私は大阪の「布施」という所に生まれ育ち、おじいちゃんがその昔お坊さんだった
こともあって、おじいちゃんがよくこの「布施」について話してくれました。
「布施というのは布(あまねく)施(ほどこす)で、物を施すだけが決して
布施ではないんだよ。物がなくとも施しのできることがたくさんある。
布施というものはしてあげているのではない、させてもらっているんだよ。
私達は布施することによって、さっぱりとした清々しい気持ちになる。
させてもらったおかげで慈悲の心の養いを自分自身の中に受けているんだよ。」
と。今回私はたまたまお礼を言っていただけることになったけれど、
これからもこんな布施の気持ちで生きてゆきたいなぁ、と思ったことでした。

他人のために何かをしてあげる、例えば、愚痴などをやさしく聞いてあげる、
やさしい顔ですごす、やさしい言葉をかけてあげる、お年寄りや困っている人に
手を差し伸べてあげる……。
もっと私にできることは何かしら。
あなたにできることは何ですか?

さて木曜日はボジョレーヌーボーの解禁日。
いつもやさしいあなた自身へのお布施においしいワインはいかがでしょう。

【2009.11.17 末金典子】