例年のこの時期なら、もう夏かしらと思うほど暑い毎日なのですが
今年は早々に梅雨に入ってしまい、なんだかひんやりの毎日で
ちょっと勘が狂ってしまうのですが、みなさんはお元気にお暮らしでしょうか。

先週の月曜日、「奇跡のりんご」で有名な木村秋則さんのお話を
ぜひともうかがいたいという樋口のリクエストで、
沖縄経済同友会の玉城さんがコーディネートを担当され、
木村さんの講演会が実現しました。
木村秋則さんのことはNHKの「プロフェッショナル」などでも既に御存知の
ことと思いますが、
リンゴ農家の跡を継いだ木村さんは、農薬なしではリンゴは育たない、という
従来の常識を覆すのに、周囲に罵倒されながらも、ずっと収穫ゼロという
11年の歳月を費やされました。きっかけは、妻が農薬に過敏な体質だったから。
でも農薬と肥料の使用をやめた途端、800本あったリンゴの木の半分が枯れ、
害虫が激発。専門書を調べ、実験しては、農薬にかわる食品を何十種類も試すも
すべてダメ。無力感と貧しさに、ついに死を決意して岩木山に入った木村さんは、
一本のどんぐりの木に出会ったのです。農薬も肥料もない山で木は元気に枝葉を
広げていました。
その後は、畑の土をできるかぎり山の土に近づけるため、
肥料をやめ、雑草刈りをやめ、大型農機具も撤廃。畑は草ぼうぼうに
なりましたが、枯れかけていたリンゴの木は少しずつ元気になり、数年後に
再び花を咲かせ、ついには実ることに。
不可能を可能にした独自の「自然栽培」でつくった彼のリンゴは「奇跡のリンゴ」
と呼ばれるようになったのです。

その木村秋則さんが、沖縄経済同友会で講演後、
大八産業・玉城さんがとりまとめておられる有機農家さんの会「しまぬくんち」
でも快く講演をしてくださいました。
その後、麗王でお食事会を開き、思わぬ大計画にも発展し!
おおいに盛り上がりました。また御報告させてくださいね。

木村秋則さんのことは私の拙い文章よりも、
お友達でもいらっしゃる茂木健一郎さんの方が素晴らしい文章でブログに
書かれておいでですので御参照ください。
http://kenmogi.cocolog-nifty.com/qualia/2006/11/post_35ec.html

実際にお目にかかりお話させていただいた木村さんは、
今、自分の目の前で話している人のお役に立つために最適なことは何かを
真剣に考えてくださる、そんな愛情に溢れた方でした。
常ににこにこなさりながらも、自分をひたすらに行き抜いた方だけが持つ
静謐な雰囲気と、真剣な鋭いまなざしがとても印象的でした。

「自分を生き抜く」これは本当に大変なことです。
自分の信念をひたすらに信じ、自分の夢をひたすらに追い続け、
負けずに生ききる。
相当の覚悟が要ることです。

麗王にもそういう方がいらしてくださいます。

その中のお一人が画家の山田夕香さん
彼女は絵筆を使わずに指で絵の具をカンバスに押し広げながら
作品を描いていきます。
以前はパリに住み、帰国し、数々の大きなイベントや個展で作品を発表し続け
今でこそ有名な画家として活躍中の彼女ですが、
画家の道というのも生活が成り立つまでは大変な道のりです。
ましてや彼女の作品は絵筆を使わない異端とも言える作風。
これでいいのかと随分想い惑い悩んだ日々があったそうです。
そんな時、訪れた沖縄でたまたまスパでマッサージを経験したのだとか。
自分の身体を指で優しく押して労わってくれるそのなんとも心地よい感覚に
涙が溢れたそうです。自分の作品達はいつもカンバスでこんなに優しく
心地よい私からの愛と労わりを感じてくれているんだ。
私は間違っていない、と。
彼女のテーマでもある、彼女の描く太陽のなんと素晴らしいこと!
ディアマンテスの「太陽の祭り」のCDジャケットでもお馴染みです。
http://www.kk-ark.jp/page/artist_yamada/yuuka_yamada.html
その彼女の個展が今年も沖縄三越で明日から開催されます。
ぜひぜひパワーをいただきに訪れてみてくださいね。
そしてぜひ元気いっぱいの素敵な夕香さんにお声かけください。

山田夕香 絵画展
沖縄三越5Fギャラリー
24日(火)~30日(月) 13時~18時 月曜のみ17時まで

また、私が「日本で一番美味しいパン屋さん」といつもみなさんに
お伝えしている奈良県の「ミアズブレッド」の森田三和さん
お忙しい中、夕香さんの個展に日帰りででもかけつけてくださるそうです。
この森田三和さんもまた自分をひたすらに生き抜いておられる方で、
自分のことを「パン屋さんだと思っていないパン屋さん」とおっしゃいます。
まさにそうなんです。彼女のパンを食べたことのある方はおわかりかと
思いますが、もうおいしいなんてものじゃない。パンが生きているかのよう
なんです。とにかくすごいパンです。毎日毎日それはもうあきずに
食べたくなっちゃう、自然で、それでいて飛びきり美味しいパン、
いえ、作品なんです。
今や三和さんも本を3冊も出されたり、「暮らしの手帖」で特集されるなど
大変な人気の方で、週末には彼女のドキュメンタリー撮りが沖縄であり、
(朝日放送)私が現地コーディネートをする予定になっています。
三和さんのパンもぜひお試しを。
http://miasbread.com/topics/news.htm

【2011.5.23 末金典子】

お元気ですか?
今年はゴールデンウィークに早々に梅雨に入ってしまい、
じとじととした休日となりましたが、かえっておうちでのんびりできたのでは
ないでしょうか。

さて、日曜日は母の日でしたね。

あなたもそうだと思うのですが、お母さんから学んだことや受け継いだことが
多々あることと思います。
昨年のお便りでは母から学んだ「謝ること」「働くこと」などを書かせて
いただいたのですが、今年は「出し惜しみしないこと」について書こうと思います。

私の母は子供である私が言うのもなんなのですが、いつもすること言うことが
仏さま・観音さまのような人なんです。
例えば、私が子供の頃、母と一緒に一緒にゆうげのお買い物に行く途中、
お乞食さんに出会うということがありました。
すると母は自分のお財布の中の今日使えるお金を
惜しげもなく全部あげてしまうのです。
それも迷うことなく間髪をいれずにさっとあげてしまうのです。
私達の夕食のお買い物にあてるお金を全て、です。
私が「なんでぇ? 今日のお夕食はどうすんの~?」と聞くと、
母は決まって「お家にあるもんですませよね。」と言うのです。
「コロッケ作ってくれるって言うたのに~。」と恨めしく言う私に、
「こういうことを“お布施”って言うねんよ。
考えてごらん。もしもあのお乞食さんが神さまやったらどうすんのん?
それに、お布施はしてあげるんやないよ。させていただくんやで。
させていただくことによって私達の心の中に清々しい気持ちが湧いてきて
その気持ちを逆に恵んでいただいてるんやよ。
そういう世界に私達を導いてくれはるために神さまがお乞食さんの姿に
なってはるのかもしれへんやろ?
あげてるんやなくて、もらっていただいてるんやよ。」 と。

その後、母から繰り返し教わったことは、
「もらおうもらいたいと思うあなたは“無い人”。
でも、求めず与えていくときのあなたは“豊かな人”。」だよと。

そんなことを思い出していた時、どこかで目にする機会があって読んだ
新幹線の座席に置いてある無料雑誌「トランヴェール」の巻頭エッセイ・
脚本家の内館牧子さんの一文を連想しましたので引用させていただきます。

脚本家の橋田壽賀子先生が「おしん」を書かれている最中、
私は先生の熱海の仕事場に通っていた。膨大な資料を整理する程度の
手伝いだが、卵以下の私にとって、一流脚本家のそばにいられるのは、
何ものにも替えがたい幸せだった。
それから約十年後、私はNHK朝の連続テレビ小説「ひらり」を書くことに
なった。先生は大喜びされ、一席設けてくださった。私は暮色の熱海が
一望できる一室で、たったひとつだけアドバイスを頂いた。
「出し惜しみしちゃダメよ」
これは強烈だった。さらにおっしゃった。
「半年間も続くドラマだから、ついついこの話は後に取っておこうとか、
この展開はもう少ししてから使おうとか考えがちなの。でも、後のことは
考えないで、どんどん投入するの。出し惜しみしない姿勢で向かえば、
後で窮してもまた開けるものよ。」
実はそのとき、私はすでに半年分の大まかなストーリーをつくり終えていた。
出し惜しみと水増しのストーリーだった。熱海から帰った後、私はそれを
全部捨てた。向き合う姿勢が間違っていたと思った。
「出し惜しみしない」という姿勢は、人間の生き方全てに通ずる気がする。

また、私が社会人になりたての頃、スーパーウーマンのように仕事ができる
女性の先輩と一緒に長く仕事をしていたときに彼女の生きる姿勢から
学び取ったこともそうなんです。

彼女は当時の私から見て、何をやらせても何を語らせても広すぎて深すぎる
そんな人でした。彼女の前だと自分が卑小な存在に思えてきたものです。
登るべき山の高さに腰が抜けてしまうという感じ。いや、山と言うより、
もう山脈、といった感じ。あらゆる分野についての彼女の引き出しの多さに
驚愕するどころか、その引き出しすべてにわたってかなり極めているのだから
もう脱帽ものでした。

その彼女の根っこにある姿勢も「出し惜しみしない」だったのです。

例えばなにかを面白いと思ったら文字通り寝食を忘れて没頭する。
普通の人なら「そろそろ寝ないと明日にひびく」とか思って切り上げようと
するところを彼女は切り上げない。ヘタすると何日でも寝ずに没頭する。
そうやっているうちに引き出しが驚異的に増えていき、結果的に様々な分野を
極めているわけです。

こうして私自身の座右の銘は「出し惜しみしない」になっていきました。

私の母も、内館牧子さんが書いた橋田壽賀子さんの言葉も、先輩も同じです。
これは宗教の話や、脚本術の話や、キャリアウーマン成功術の話ではありません。
生き方を語っているのだと思います。

あなたはどうでしょう。「まぁこのへんでいいや」「あまりがんばる姿を
見せるのも格好悪いし」「身体に悪いからいい加減にしておこう」…。
こんな風に少しずつ自分を出し惜しんでないでしょうか?

でも、出し惜しみはあなたの明日を何も変えません。今日と違う明日を
生み出しはしません。あなたなりの、想像できる明日しかやって来ません。

出し惜しみせず生きてみましょうよ。長続きしないかもしれません。
でも挫折してもまたすぐ始めましょう。
思ってもみない明日が、きっと、やってくるはずだから。

よ~し、まず今日は、明日のことなど考えずに飲み明かすぞ~!
ナーンテ、ダメかしら?

【2011.5.11 末金典子】